稽古場レポート第一回 – 11月5日

投稿者: dcpop13aqua

DULL-COLORED POP 第13回本公演、『アクアリウム』の稽古場レポートをお届けします。執筆担当は主宰・谷賢一の知己のライターのY氏(仮名)です。一見普通なようでわりと普通でない、アグレッシヴかつアジャストメンタルな先鋭的稽古場レポートを目指します。巷間のヌルい稽古場ブログを一掃し、現代日本の演劇界隈の稽古場レポート界の常識を塗りかえ、新風を巻き起こす所存です。嘘です。ご期待ください。

レポートの更新はできるだけ頻々に行います。いずれは稽古場でじかに俳優の方々にインタビューした記事も並行して載せていきますので、みなさま今後も定期的にチェックしてみてくださいませ。

さて、11月は5日火曜日は『アクアリウム』の稽古初日でした。出演者の方々の初顔合わせ、そして台本も完全には上がっていないという段階で、何を「稽古」するのか。実際行なわれたことを箇条書きにすると以下のとおりで、内容の濃い四時間でしたが、おそらく、この日最も重要だったのはワークショップ的な(4)でしょう。三好十郎「冒した者」の冒頭部分の、テキスト読みです。
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(1)自己紹介
(2)公演概要の説明
(3)顔写真の撮影
(4)テキスト読み(三好十郎「冒した者」冒頭部分 http://ow.ly/qwomo
(5)谷演出による『アクアリウム』のモティーフについての話
(6)『アクアリウム』台本冒頭部分の本読み
(7)谷演出による『アクアリウム』の形式面でのコンセプトについての話
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稽古場は閉校になった学校の教室を再利用した空間です。そこで机と椅子をすべて教室奥に片寄せると、ちょうど空いたスペースの幅がシアター風姿花伝の間口に近似する。そのスペースに俳優の方がひとりひとり立って──あるいは椅子や小道具を使ってもいい、その点はまったく自由──、「どう読んでもいい。正解はない。読みをトチってもいい。あまりテキストに呑み込まれずに、自分のイメージを自分の思うように語ってください」という谷演出の指示に従って、三好十郎「冒した者」の冒頭部分を、読む。谷演出が止めるまで読む。止めた後には、谷演出からのコメントが入る。時には俳優との質疑応答がつづく。

一例を挙げれば、机の上にテキストを置いて、坐りながら最小限の動きでなだらかに読んだ中間統彦さんに対しては、「あなたがちゃんと書物を読んで来た人だということが分かる。意味を掴めているところの読み方は良い。逆に意味があいまいなんだなってところのブレ方がハンパない」とのコメント。こうして、俳優は各々谷演出の目を通して自分の持ち味を再認識する。あるいは自分が無意識にやってしまっていることを意識化する。そして自分がテキストのどの箇所を読むときに流してしまったか、無理をしてしまったか、言葉を味方にできなかったかを、自覚する。

そしてその先にあるのは、谷演出が今現在迷いつつ目指したいと思っている「リアル」の方向性を、座組全員で共有すること。意味も風景も的確に伝えてくるような教科書的な読み方(演技)が正しいのか。リアルをもっともらしくリアルにやれば正解なのか。そんなのは単に「よく出来た」お芝居ではないのか。観客に「よく出来た」という以上の凄味の印象を与えるにはどうすればいいだろうか。かといって、重たいことをあえて軽薄に提示するというような天の邪鬼な手法は、もう耐用年数が尽きている。もっと違うやり方で「的確な」「よく出来た」を超えるなにかを目指せないだろうか。そう、今回三好十郎のテキストを使用したのは必然性がないわけではないのだ。「もう芝居はたくさんだ」……。ならばどうするか?

この問いは、実は(7)作品『アクアリウム』の形式面でのコンセプト、という話にもつながってくることなのでした。ですが、それはまた後の機会にレポートしたいと思います。まだまだ稽古ははじまったばかり。俳優の方々が谷演出の考えを汲んでいくのもまだまだこれから。誰ひとりとして同じ持ち味でない鋭く個性的なキャストの面々、そしてそれをまとめ上げる谷演出の奮闘が、一ヵ月後、どのような舞台芸術を生み出すことになるのか。今後も逐一レポートしていきます。

次回のレポートにつづく!

【今日の一枚】
下の写真は『アクアリウム』台本冒頭部分を読み合わせ中の、一色洋平さん(左)と大原研二さん(右)。台本の掛け合いの面白さと、二人の個性が相俟って、始終笑いが絶えなかった時間帯。一色さんと大原さんの両者は「冒した者」のテキスト読みの際にも抜群の個性を発揮していたのですが、長くなるのでその詳細は残念ながら割愛します。とまれ、『最後の精神分析』における木場勝己さんとの稽古から学んだことを踏まえての、谷演出の一色洋平さんにたいするコメントなど、あまりに重要なので、これから後のレポートで触れる機会もあるでしょう。
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