稽古場レポート第四回 – 11月9日

投稿者: dcpop13aqua

『アクアリウム』の稽古場レポート、第四回をお届けします。

レポート本文に入る前に、あらためてこのレポートの方針を確認します。一応これはDCPOP第13回公演の宣伝のための取材記事ではありますが、谷主宰からは「宣伝という意識は抜いていい」「中立的なジャーナリストの視点で書いていい」と通達されてもいる。つまり、演劇の創作現場の知的なドキュメンタリーという趣旨もこのレポートにはある。ですので、以下では宣伝に好都合か不都合かということをあまり気にせず、起こったことをありのままに書いていきます。

稽古四日目の今日は、客演の方は急遽の稽古オフで(といっても渡邊亮さんと中間統彦さんは最初の数時間は参加して早退というかたち)、劇団員だけが集まっての稽古でした。そしてまずは、劇団員たちにディスカッションをさせておいてそれをただ坐って見ている谷演出。三十分が経過。四十分が経過。しかしやがておもむろに発言する。

「ここまでの原稿、全没にします。」

理由は、今のままの作品の構想だと役者に対するオーダーが際限なく高度になっていくので、稽古時間が圧倒的に足りない、との由。ひとりひとり一週間ずつみっちり稽古して、ようやく形になるぐらいのもので、それも形になるだけだから、とてもじゃないが一ヵ月のロングラン公演に堪えるものにはならない。さらにはそうしてひとりひとりの稽古をつけた上で作品全体のバランスを取るという修整も必要で、あと一ヵ月弱で板にのせ得る水準に持っていく自信は、ほとんど持てない。「申し訳ない。俺の見通しが甘かった」。部分的なカットも難しい。役者にとって困難なパートを削っていってしまったら、作品構想そのものが痩せてしまうから。「そうするよりはもう、イチから構想を組み直した方がいいかもしれないが……」。

選択は二つに一つ。無理を承知で今のままの構想でつき進むか、モティーフはそのままに構想を基本から組み直すか。前者の場合稽古時間の不足は目に見えているが、後者もさらに台本の完成が遅れるということで──しかも組み直して良いものになるとは限らない──時間との戦いはどうしたって切迫したものになる。

窮して黙り込んでしまった谷演出に、劇団員の面々はさまざまな声を掛けていく。「今は谷さんはどれだけわがままでもいいと思う。稽古の予定が変わって役者が迷惑するとか考えなくていいと思う」との中村梨那さんの後押し。明日の稽古のために自主的に役者だけでできることを率先して提案していく堀奈津美さん。「原稿全没にしても全然意に介さないあの●●さんを、谷さんも見習ったらいいのに」と演助の元田暁子さんの謎の励まし。……そして最終的に、明日は俳優のみでの自主稽古とし、谷演出はしばらく籠って作品構想を新たに組み直すのに専念することに決まりました。

予想外の剣呑な展開。しかしこの稽古場レポートも、本作の座組の奮闘もまだまだつづきます。

次回のレポートにつづく。

【今日の一枚】
今回はおちゃらけなしで。椅子に坐って苦悩する谷賢一。この難境も、後になって平和な苦労話になるようにと祈りたい。
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