INTERVIEW – 一色洋平さん

投稿者: dcpop13aqua

『アクアリウム』出演者インタビューの三番手は、弱冠二十二歳、役者として多彩に活躍しながら並行して総合運動トレーナーとしても活動されている、一色洋平(いっしき・ようへい)さんです!

────一色さんはお父さま(脚本家・一色伸幸さん)の影響で幼少の頃から舞台観劇の経験はあったそうですが、大学で早稲田大学演劇研究会に入るまでは、演劇をやろうという機会はなかったのでしょうか。
一色 本格的には、なかったですね。自分の行っていた高校が、文化祭で、何の決まりもないのに全クラス演劇をやって毎年お客さんの投票で一位を決めるみたいなことをしている学校で、それに熱心に取り組んだということはありましたけど。でも、演劇に対する関心は昔からあって、高校三年の夏に中学からやっていた陸上競技を引退してから、今後何をやろうかと考えたときに……その頃も僕は舞台観劇によく行っていたのですが、まわりの男友達はほとんど舞台を観たことがないという人たちばかりで、それが勿体ないなと。舞台って面白いのになと。そう思って、どうやって周囲の友達に演劇を広めようかといろいろ考えてみたところ、まずは自分たちで演劇をやってみんなに見せようということを思い付いて。演劇部の仲の良い友達を誘って演劇ユニットを組んで、芝居をすることを始めました。それが演劇に主体的に取り組んだ初めてです。なんというか、最初の動機は、俳優になりたい、プロの役者になりたいということよりも、演劇の面白さを是非多くのひとに知ってもらいたいという想いでした。

────そして大学では演劇研究会に入って、本格的に演劇の道へ進んだということになりますが……その前に、一色さんは総合運動トレーナーであるという一面もある。陸上競技を引退した選手が必ずしもトレーナーになるとは限らないことを考えれば、トレーナーの資格を取ろうとされた動機も伺ってみたいのですが。
一色 まず、大学では陸上をやるつもりはなかったんです。自分も一応色んな戦績を残してはきたのですが、自分の身体のことは自分が良く分かるので、大学入ってからも勝てるかどうかは多分難しいと自覚していて、高校できっぱりやめる決心はついていました。でも、それでも、運動競技、陸上競技、そしてひとの身体というものがすごい好きだっていう気持はあって……なんで好きかというと、身体っていうのはとても単純だからです。1+1=2くらい。そんな単純な計算問題のように筋肉痛の理由が分かったり、こっちを治しちゃえばこっちも治るみたいなことがすらすら分かったり。そういうとっつき易いところから好奇心を持って、また、自分は人をサポートすることも好きだったので、それが相俟って、指導者、トレーナーとしての勉強に取り組むようになりました。

────そして総合運動トレーナーとしての知識を演劇にフィードバックするかたちで、一色さんは俳優へのトレーニング、劇団へのワークショップ等も行なっているとのことでしたが、それはどういった内容のものなのでしょうか?
一色 俳優っていうのは作品によって身体つきがいろいろ変わらないといけない職業だな、と思ってるんです。僕も出る芝居出る芝居で結構身体つきが変わります。その変わることを見越して、俳優は変わりやすい身体を用意しておくべきじゃないかと思って。怠惰で不活溌な身体もときには必要なのだろうけど、ときにはすごくキレる身体も要求されることもあるわけで、そのためのフレキシブルに動ける要素を身に付けたら俳優にとっては役立つんじゃないかと思って、僕はそれを「フレキシブル身体論」って呼んでるんですけど、そのことを最近俳優の方々にお教えしたりしています。

────お話を聞いているとやはり「身体」というのが一色さんにとって肝要なのだと感じます。そこで、たとえば稽古初日の『冒した者』のテキスト読みでも、一色さんは「身体と演技の関係について何かポリシーをもってますか?」と谷さんから逆に質問されていましたが、実際そのような意識、ポリシーを明確にお持ちでしょうか。
一色 そうですね……いつのことか明確じゃないんですが、今まで色んな方と出会ったり、同じ演劇をするひとと出会ったりする中で、その相手の普段、平素やっていることをすごく気にして注目するようになった時期があったんです。こうやって単に会話しているときに相手がどういう動きをするか?とか。中にはめちゃくちゃ動きながら喋るひともいるし、じっと動かないひともいる。それを観察してみたときに、或る時ふっと、視点を折り返して、じゃあ自分が動きをつけて喋ったりするのは一体どういう時なんだろうとすごく冷静に自分を省みて、そこから、実は身体と心って関係してるんだなってことに気づいたんです。で、演劇の稽古においてもこの気づきは重要だなと思って。というのは、稽古中演出家から「今の感じ良かったよ」と言われた時に、俳優としてはそれを毎回毎ステージ再現したいと考えるわけですが、それをどうやったら再現できるのかということの答えは、たぶん自分の身体の内にしかないと思うんです。つまり、どのくらいの横隔膜の震えだったか、手足にどれだけ力が入っていたか、お尻はどれだけ締まっていたか、肋骨がどれだけキュッとなっていたか、そういった感覚を、例えばそれにともなう感情を再現してみるのではなく、同じ身体の状態を再現してみるだけで、似たような感情がまたふっと再現できたりするということもある。そのことに気が付いたんです。そこから、身体と心がリンクしているならば、先に身体の状態の方を用意してしまえば、感情の方も再現しやすいんじゃないか、「良かった」テイクを再現するには、実はそれも一つの近道なんじゃないか、……そういうことを、自分なりにいろいろ試してみて見出していきました。それが、身体と演技にかんする自分の考えと言えば考えです。

────一色さんはtwitter上で、先日まで出演されていた『太陽とサヨナラ』で学んだことは「息を吸うこと」と「力を抜くこと」の偉大さだ、と仰っていたのですが、それもまた、今の身体と演技というお話とつながることでしょうか。
一色 なんだろう……呼吸のことは、相手の話を聞くときに自分はどうしてるだろうか、と言う疑問から考えはじめたことで……自分が話しているときのことはよく覚えていても、聞いているときの自分の状態はあまり意識していなかったな、と思って。それで、自分の身体を振り返ってみた時に、「あ、人の話は息をちゃんと吸わないとちゃんと聞けんな」ということに気がついたんです(笑) 普段の生活で、聞いている時の呼吸を色々試してみたのですが(止めてみたり、吐いてばっかりにしてみたり)、やはり聞く時間が長くなればなるほど、きちんと吸わないといけないことが分かりました。ところが、僕は、舞台上で相手の話を聞くときに、どうやら吐いている量の方が多かったんですね。そして、僕なりの身体論を踏まえて言うと、息を吸うことによって身体全体の動きは正しくなるし、息を吸う量が少なくなると低酸素状態っていう集中力が低下する状態におちいってしまうので、やはりちゃんと息を吸って身体の状態を落ち着けて相手の話を聞くということが必要なんだなと考えはじめて。それが『太陽とサヨナラ』の初日の頃です。本番の舞台上で、ぼーっとしてるわけじゃないんだけどなんか相手の話を上手く聞けないなと感じたときに、自分はどうやら息を吐く量の方が多くなっている、と気づいた。で、吸った瞬間に、相手の顔が鮮明に、すごく立体的に正確に見えてきて、あ、これだ、呼吸が重要なんだ、と分かったんです。ほかにも、ゆっくり歩くときとかも、集中していると息を吐きながら歩いてしまうんですが、そうじゃなくて逆に吸った方がはるかに楽に歩けるんだな、と気づいたり。そういったことを本番を重ねる中で学んでいきました。

────身体と演技について、非常に興味深いお話ですが……長くなってしまうのでこの辺りで切り上げさせていただきます。最後に、このインタビューを読まれるみなさまにメッセージをお願いします。
一色 先日、ピーター・ブルック(イギリスの演出家)のインタビューに、「演劇の無力さを感じるというのは最悪の状況といえるでしょう。」という一節がありました。88歳になる彼が、世界の演劇界の第一線を走っている彼が、「演劇は世界を変えられる!」と力強くコメントして下さったのです。22歳の走り始めの若僧が、それを信じて走らない手段は、ありません。──今作品『アクアリウム』が、一人でも多くの方の人生に関われますようにと力強く願って、1ステージ1ステージやっていきたいと思います。どうぞ、宜しくお願い致します。

★一色洋平さんの『アクアリウム』チケット個人予約ページ(東京公演12月分のみ)
https://ticket.corich.jp/apply/51045/010/
★一色洋平さんのtwitter
https://twitter.com/yohei_isshiki
★一色洋平さんのブログ「いっしきにっき」
http://ameblo.jp/yohei-isshiki/

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