稽古場レポート第十二回 – 11月21日

投稿者: dcpop13aqua

『アクアリウム』の稽古場レポート、第十二回をお届けします。
(目下『アクアリウム』について耳寄りな情報が公開されていますので、そちらもよろしくです。 →『アクアリウム』情報公開第2段!! http://ow.ly/qTVvC

本日も前日からのつづきで立ち稽古。でも稽古するシーンがシーンなだけに、今回はダメ出しでかなり細かく間やニュアンスが指定され、谷演出のイメージに沿うようにがしがし演技が研磨されていきます。もちろん、俳優たちにエチュード的にアイディアを出させて、出て来た反応のなかから面白いものを採用していく、といった時間帯もありましたが、おおよそしつこいくらい丹念な返し稽古で、シーンの完成度を高めていくということがつづく。

谷演出のダメ出しがどれだけ細かいか。たぶんそれは、読者の方の想像の五割増しくらい細かいので、今回は具体例で描写していきます。

たとえば、或る役Dのそんなこと言う必要ないでしょ的な科白に対しての、役Eの応え、「どうして?」の一言について。谷演出はまず「ここちょっと気になるんだけど……」と違和感を表明してから考え込む。初発はちょっとした違和感から始まる。そしてそれをじっくり考え考え言語化し、ダメ出しとして提示していく。それによって「……たぶん、この『どうして?』が疑問に聞こえちゃうと良くないんだと思う。『なんで?』って訊いちゃう感じじゃなくて、『言えて当然でしょ?』っていう、言えない人の存在があり得ないみたいに引いちゃう感じの『どうして?』だと、良いんだと思う。自分の常識が当然だと思っている、聞いててムカつく感じ。『なんで?』と疑問にしてしまうとその感じが出ない。」──というふうに、やたら精密なニュアンスの修整が行なわれます。しかもこの修整は、このシーンで役Eが基本的には善人っぽく、申し訳なさそうにしていながらも、ときどき「言えて当然でしょ?」みたいな怖さを見せることが、周囲に対して不気味さを伝播していくという現前的効果に寄与するものとして、一貫した作為のもと、指定される。そして俳優の方も、ダメ出しを受けて、自分のやり易い感じ、つなぎ易い感じではなくて、谷演出の一貫したイメージに沿うように演技を適宜変えていく。そんなふうなねちねちした稽古が、延々とつづくわけです。

もう一例。役Eと役Fの以下のようなやり取りについて。
E「なら話が早い。」
F「え?」
E「あぁ、いえ。」
F「え?」
この役Fの最初の「え?」について、谷演出はまず「まだちょっと求めている音と違うかな」と言及する。つづけて、この「え?」は全然何を言われている分からない感じだと良い、と説明。ここでのEはあまり状況を呑み込めていない方が場の空気にもふさわしい……。そして突然、E役の俳優に向かって「あなたは清涼飲料水でいったら何?」と質問する。それがあまりに意味不明なので、しばらく絶句してから、ふと笑い出してしまうE役の俳優。すると、すかさず「そういう感じそういう感じ! 『それ何の質問?』って感じで、ほんとに頓珍漢なことを言われて、うっ、ってなる感じで、この『え?』を出せると次につながっていく」と指摘する谷演出。稽古場で現われるダメ出しの手管は多種多様。ときには、こうして捻った喩えを使って、言語化の難しいニュアンスのヒントを役者の方に与えていくこともあります。

上の二例はもっとも細かいダメ出しの例です。必ずしもこんな修整ばかりつづいたわけではないですが、今日一日の立ち稽古で、所作や目線や反応も含めた細部への彫琢がほどこされ、ぼんやり観ていると見逃しそうな舞台上の瞬間にまで、演出の神経が張りめぐらされていきました。ちょっと宣伝っぽいことを言っておけば、この演出の精緻さは、一度観ただけでは味わい尽くせないです。それは断言しておきます。(リピート観劇しましょう、ということ。)

次回のレポートにつづく!

【今日の一枚+α】
前の方に集まって稽古を見る俳優の男性陣。若林えりさんと中村梨那さんが演じなければならない或るシーンについて、彼らがしきりにアドバイスを飛ばします。なぜ男性陣が、なのかは、実際の上演を観ていただければ分かります。たぶん。
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神妙にアドバイスを聴く若林さんと中村さん。
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