稽古場レポート第十五回 – 11月26日

投稿者: dcpop13aqua

『アクアリウム』の稽古場レポート、第十五回をお届けします。
(目下『アクアリウム』について耳寄りな情報が公開されていますので、そちらもよろしくです。 →『アクアリウム』情報公開第3段!! http://ow.ly/r7V4g

残り時間との戦いになってきた26日、この日はまず舞台監督の鈴木拓さんから本作『アクアリウム』の舞台説明があり、どのような舞台装置、どのような出捌けになるかを或る程度俳優陣が把握した上での、冒頭からの返し稽古です。谷演出曰く、今後通しは何度もやるだろうけれども、前半を細かく当たるのは今日を含めてあと幾度かだろう、とのこと。

公演が迫ってきた上での返し稽古。なんというか、立ち稽古は今までにもやって来ていたわけですが、今日の谷演出はこれまで以上に脳みそをフル回転させ、「フィックスできるところはガンガン決めていきます」という勢いで、あいまいなままになっていた動線、立ち位置、小道具の移動、身振り、仕種、間、動き出し、視線、科白の出始めのタイミングなどを逐一決断し、指示していきます。その決断は迅速で、事前に演出プランが頭の中にあるだろうとはいえ、その場の思い付きで数パターン試したり、俳優がちょっとやってみたことを即採用したり逆に即削ったり、その間谷演出が考え込む時間は30秒〜1分程度、とにかくもの凄いスピードで役者の動きが次々と整理されていく。ぼんやり見学していると置いていかれる速度で。まるで早指しの将棋を観ているかのような。「『……』の科白はもうちょっと待った方がいい」「普段の一番ゆっくりのさらに半分の速度で歩いてくれる」「そこ、下手から動かなくていい」「もうそこで雑誌取って読んじゃおう」「相手の笑いが終息してから3拍待ってくれる」「上手ソファに坐ったら部屋全体を眺めまわしながら喋ってくれる」「『……』の科白を喋るまでは真ん中に居て、それを言ってから寄って行って」「僕がキュー出すタイミングで大原さんだけ入って来て」「この科白を言い出す間を決めよう。7秒」「『……』の科白で●●は一旦積み木遊びに戻ろうか」「そこで、自嘲気味の笑いでリアクションしてくれます?」「『……』の科白で、紙皿とコップをみんなに配って」「そこは台本の行通りに進むんじゃなくて、ちょっとエチュードっぽく、それぞれみんな口を挟もうとしてみて」……

そのめまぐるしさに従いて行くのには、一見学者の立場では限界がある。想像するに、おそらく谷演出の頭の中で現前的効果に関するメリット・デメリットの計算が瞬時に行なわれて、「ここで2・5拍間を取ったらどうなるか」「ここで動線を減らしたらどうなるか」「ここでAが相手に振ってみたらどうなるか」「ここでBのポジションを下手の椅子に変えたらどうなるか」という変化の結果をほぼ確信した上で、おおむね望みどおりの効果が得られればばちばちフィックスさせていくというふう。印象に残っているのは、或る人物Cが別の人物Dに対して真顔で「おはようございます」と言う局面で、その人物Cの顔を客席に見せるかどうかを試行錯誤したとき。最初はCの真顔が見えていた方が面白いだろうということで、動線を大きく変化させてDが下手前に、Cが上手奥に回るようにした。でも、もう一度Cが下手前で客席に背を向けているポジション(動線としてはこちらの方が自然)でやるのを試してみて、結局こちらの方で確定させました。理由は、「やっぱり表情を想像させた方が面白いから」。この確定のためにも谷演出はほとんど長考していません。

もう一つ印象に残っているのは、人物Eがその場に集まっている人達に向かって一つの科白を喋っているときに、他の人物がその内容に思い当たって、各々反応するようにと指示されていた、局面。前日までは「Eの科白を聞いているうちに何か気づいたというふうに、各自リアクションしてください」という自由度の高い指示に留まっていましたが、この日は、それでは得たい効果にとどかないと考えてか、谷演出はその場のひとりひとりに、「Fはこの科白の出だしで振り返って」「Gは科白がここまで来たらのけぞって」「Hは科白が終わったら他の人の顔をちらちら見て」という具合に、リアクションのパターンとタイミングの指定を行なった。得たい現前的効果のためには決められるところは細かく決めていく。このときも、思い付くまでに長く時間を掛けたりしていないし、指示は一度で確定して稽古はどんどん次の局面へとつづいていきます。

もちろん役者の動きの確定だけではなく、科白のニュアンスへのダメ出しなどもまだまだ厳しく行なわれる。稽古日あと数日でどこまで完成に近づくのか。置いていかれないようひきつづきレポートできればよいのですが! 次回のレポートにつづく。

【今日の一枚+α】
一枚目。テーブル上の小道具を確定させるために全員でディスカッション中。「●●がつまみ食いするには何がふさわしいか」を真剣に議論したりします。
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二枚目。稽古場前の黒板を使って、俳優にダメ出しのイメージを理解させるべくチョークで図を書く谷演出。「何か複雑な想いがあって『俺はビルを見てる』の科白が出てくるんじゃなくて、この複雑な想いをこっち(と矢印を描く)に持ってきたいな。パッと『俺はビルを見てる』の科白が出たあとに、その意味についてうにゅうにゅうにゅって考えてるみたいだと、いい」。
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三枚目。通し稽古中に他の人の科白ミスをチェックしてメモしている百花亜希さん。この日は別用で演助の元田さんが稽古場に居なかったのに代わり、自分の出番がないときにこのように率先して現場に貢献します。
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