イベントレポート – アクアリウム体験ワークショップ(12/15)

投稿者: dcpop13aqua

先日、普通だと思われたい、という日本人らしい心理から稽古場付記者の立場を離れて「普通の観客に戻ります!」と宣言したわたくし──。ところがかつて「普通の女の子に戻りたい」と泣き叫んで解散したキャンディーズの伊藤蘭が数年後にまた芸能界に復帰したのよろしく、当レポートもまた、散発的に復活するのです。「別に最初からおまえ普通の観客じゃねえか」という突っ込みはあまりに正鵠を得ているので、止めてください。さて、今回掲載するのは12月15日(日)に行なわれた『アクアリウム』限定ワークショップのレポートです!

レポート本文に入る前に。写真を多数用いたこのレポートは、『アクアリウム』の舞台セット・シーン内容に関するネタバレをあからさまに含みます。ですので、まだ『アクアリウム』をご覧になっていないという方は、そっとブラウザを閉じてください。そして反省してください。さらに「何故俺はまだ『アクアリウム』という傑作を見逃したままでいるのか……Why?」と自問自答してください。というか『アクアリウム』を観ていないのに『アクアリウム』限定ワークショップのレポートに興味を持つ不思議なひとがいるとは思えないので、この注意書きは無駄かもしれないですが、とまれ、まったく前情報なしで『アクアリウム』という作品を楽しみたい方は以下を読まれないことをお勧めします。来るなら来てみろ! 俺はネタバレなんぞ恐れない!という果敢な方のみ、画面をスクロールしてレポート本文へ飛んでくださいますよう、よろしくお願い致します。








































まずは一枚の写真の説明からはじめましょう。
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『アクアリウム』をすでに観劇された方なら、この写真の意味するところはお分かりですね。これは実際に舞台に立って、舞台奥から客席を写したものです。舞台に当たっている照明、アクアリウム、客席との距離がどう感じられるかということが如実に分かります。こういった、観客にとどまっていたら絶対に立つことのできない視点に立てるということが、まずはこのワークショップが「体験」ワークショップと名付けられている所以と言えます。

時と場所は、12月15日の日曜日、15:00〜の一ステージを終えたあとの19:00から、シアター風姿花伝の劇場内にて「アクアリウム体験ワークショップ」は行なわれました(22日にも同内容のワークショップが実施されます。詳しくは→ http://www.dcpop.org/stage/next.html#ws )。参加者は十数名と比較的多数で、しかも15日と22日に振り分けられていた出演俳優の方々でしたが、この日はお時間があったのか十名全員(+ゲスト出演者の山崎彬さんも!)の登場で、非常ににぎやかな雰囲気でのワークショップとなりました。下の写真は無駄にホラーな照明のもと、アクアリウムの後ろで最初の挨拶をしている谷演出です。「本日はご参加ありがとうございます……」
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「アクアリウム体験ワークショップ」を開催する意図については、すでに谷演出手ずからの文章がブログに掲載されています(『アクアリウム体験WS』をやる意図と狙い http://bit.ly/1cKEhTn )。その狙いを一言で言えば、お客さんの演劇への関わり方を「観に行く」以上のものに広げてみること。それも、しかつめらしい演劇講座という形ではなくて、もうちょっと気軽に演劇を「自分でやる」ものにするための機会を提供すること。そしてその素材として、現在目下公演中の作品の舞台美術/出演俳優/演出(照明、音響)をそっくりそのまま流用してしまうこと。公演期間中の作品「体験」ワークショップ──こういうのに前例があるのかどうか寡聞にして知らないのですが、思うにあまり類例のない、「演劇屋」を自称している谷賢一氏らしい企画・発想のように思えます。実際、参加者の中には、現在進行形で俳優として活動されている(ないしは学んでいる)方だけでなく、普段は演劇とは全然関係のない仕事をしている方や、観劇を趣味としながらも舞台に立てるほどの才能は自分にはないと思いつつ……でもちょっとぐらいは俳優の立場を体験してみたい……という動機で参加された方もいらっしゃいました。「演劇未経験者大歓迎!」の言葉に二言はないのです。下の写真は谷演出からワークショップの説明を受けている参加者のみなさま。
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「自分でやる」ものとしての演劇。お客さんにその機会を提供すること。その試みとして今回のワークショップで参加者に渡されたテキストは、作品『アクアリウム』の台本から1〜2頁ほどの長さのシーンを幾つか抜粋して並べたものでした。参加者はそこから自分のやってみたい役とシーンを選びます。そして、なんと相手役の出演俳優の方と一時間ほどちゃんと読み合わせの稽古を行なって(同一シーンに希望者が複数いた場合はグループで稽古する)、その後、まさに劇場内で上演時そのままになっている舞台美術の上で、上演時と同じ照明と音響のもと、『アクアリウム』出演俳優を相手役としてシーンを演じるという「体験」をすることができるのです。別に、上手く演じなきゃならないなんてことはありません。谷演出もとくにダメ出しなんてしません(コメントはもらえます)。そこでは単純に『アクアリウム』の作中人物になりきって、そのシーンにおける感情を体験するという楽しみがある。ゆかりさん(中林舞さん)から○○○されるというマゾ的な楽しみ。部長(大原研二さん)の怒声に対して必死にリアクションしまくるという面白さ。さらには参加者の頑張り次第で、場合によっては実際に上演された『アクアリウム』とはまったく違ったテイストの『アクアリウム』が展開することもある。下の写真は出演俳優の主導のもと、読み合わせの稽古を真剣にやっている参加者の方々。
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そして練習の成果の発表会。これ、トリのぬいぐるみの中にいる方は若林さんではなくて参加者の方です。実際の上演のものより斜め上方向にコミカルになっていましたが、それでも成立しているように見えるのが面白い。
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次の写真は、てつ(東谷さん)とゆう(参加者の方)のあのシーンですね。こういった絡みも含めて戯曲『アクアリウム』の世界を文字どおり実地体験できます。
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以下は、緊迫した表情のてつ(東谷さん)とゆかり(中林さん)に挟まれての、さらにはワニ(中村さん)、トリ(若林さん)、ゆう(堀さん)らに囲まれての、きわどく動揺していくしんやを演じる参加者の方。実際のしんや=渡邊亮さんと参加者の方との個性の差分が、そのまま立ち上がるシーンの印象の違いへとつながっていきます。
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で、とりあえずわたくし自身も参加してみたので──しかも自分は演劇をやっている人間でもなければ、俳優志望の人間でもありません──その立場から感想を言ってみますと、……当たり前のことなんですが、何度でも反復することができる上に、客の視線を受けないシーン稽古という段階と、照明・音響・演出あり、客の目線ありの一度きりの瞬間においてシーンを演じるということは、全然別の体験なのですね、ということ。その瞬間には、緊張もするわけですけれども、集中力も高まるしテキストの読み方も客との関係性のなかで変わっていってしまう、ということ。そういった舞台上のその場かぎりのライブ感が、「演劇」の醍醐味の根っこなんだろうか、と。そんなふうなことを、実際やってみて、考えました。これはやはり直に舞台に立って照明を受けて、相手役の生身の俳優を前にして、観客(といっても今回の場合は他の参加者+俳優陣+谷演出)のプレッシャーを受けつつやってみないと、実感できないことなのかもしれません。そういう意味でも、舞台美術、俳優、照明・音響が実際の上演時のものとほとんど同じという状況で演劇を「体験」できる今回のワークショップというのは、たしかに、演劇未経験者に対してこそいっそう新鮮で大いに訴求する企画なんだろうな、という気がします。バックステージツアーならぬオンステージツアー──面白い試みです。

ちなみにこの「アクアリウム体験ワークショップ」は、舞台セットの中を歩いて、舞台裏にまわって、楽屋まで降りていって、外回りでまた劇場入口まで戻ってくるという「バックステージツアー」も兼ねています。すなわち、ワークショップ前半の数十分をつかって舞台、楽屋の見学をします。そのときには、上演中客席からは絶対に見えないような細部まで舞台美術を視認することができるし、アクアリウムの中の魚の数を数えることもできるし、谷演出の音響のこだわりについてのレクチャーを聴くことができたり、舞台裏の超狭い空間を実際に歩き回ったりと、インサイダー的な立場から『アクアリウム』の舞台の構成要素をひととおり体感することができます。とはいえ、実際何を見られるかお伝えするには、写真を載せた方が早いですね。以下は何の写真でしょうか?
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舞台奥の壁に掛けてある掲示板です。どう考えても客席に坐っていてはこの文字は読めません。にもかかわらず「年末大そーじ忘れるな!!」の文字の下に、「12月の目標」として各住人の今月の目標がちゃんと各人の個性を反映しつつ書き込まれています。
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これは何か。よーく見ると「B’z」の文字が読めますね。すでに観劇された方なら「光嶋さん、ほんとに用意してたんだ……」と衝撃を受けること請け合いです。
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何でしょうかこれは。とくに秘すことじゃないので言いますと、楽屋に通じる階段の上にある小道具置場です。発泡スチロールのカツ丼やシュークリームといった剣呑な兵器がここに格納されています。その他、絶対に観客の目のとどきようのない『アクアリウム』の舞台裏を、参加者はとりどり見学することができます。

簡潔に言えば。今回の「アクアリウム体験ワークショップ」、要するに『アクアリウム』という作品を使って、お客さんらとシアター風姿花伝で遊んじゃおうというイベントです。非常に敷居が低い上に、とくに演劇未経験者の方にとっては、滅多に経験することのできないことを味わえる三時間になりますので、もし、以上のイベントレポートを読んで興味もたれた方いましたら、22日にももう一度開催されるワークショップに参加してみるとよいと存じます。すでに『アクアリウム』を観劇されてこの作品を気に入っているというのでしたら、なおさらです。ただし! 老婆心ながら一つだけ忠告しておきますと、「演じてみたいシーン」の選択で、しんやのモノローグないしは少年Aの長科白を選んでしまうと、二時間ぐらいまったく出演俳優の方と絡みがないまま時間が過ぎる(相手役が必要ないシーンなので、「稽古」と言っても独りで台本を読むだけ)という大変ソリタリーかつソフィスティケイテッドな状況に陥る羽目になりますので、止めた方が無難です。この点は経験者の言うことを聞きましょう。みなさまがわたくしの二の轍を踏まず「アクアリウム体験ワークショップ」を最大限楽しんでいただけるなら、筆者としてこれに勝る喜びはありません──。

イベントレポートは以上です。最後に、写真を一枚。このハンモックに腰掛けているチャーミングな男は誰か?──すでに観劇された方には説明するまでもありませんね。十二人目の出演者、「竹井ーーーーー!」こと舞台監督助手の竹井祐樹さんです。舞台美術について気軽に質問すれば丁寧に応えてくださるので、疑問に思っていることなどあればワークショップ中どんどん話し掛けてみるとよいですよ。
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